原発のない社会をめざして 2016年04月
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「想定外に備え、川内原発は一時稼働停止を」 30キロ圏住民調査を行った広瀬弘忠氏に聞く

【「想定外に備え、川内原発は一時稼働停止を」 30キロ圏住民調査を行った広瀬弘忠氏に聞く】
東洋経済ONLINE 2016年04月26日

「原発事故が起きると安全に避難できない」。川内原発周辺の多くの住民がそう考えていることが、広瀬弘忠氏が代表取締役を務める「安全・安心研究センター」によるアンケート調査で判明している。余震が続くなど、「赤信号が点滅している状態だけに川内原発はすみやかに一時稼働停止を」と訴える。

――熊本地震では、九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)をはじめとした西日本各地の原発の安全性が懸念されています。

九電は万一の場合を想定して、いったん川内原発の稼働を停止すべきだ。4月14日午後9時26分に熊本県内を震源域とするマグニチュード6.5、震度7の地震が起き、その28時間後の16日午前1時25分にはさらに大きいマグニチュード7.3、震度7が発生している。さらに19日午後5時52分には川内原発により近い八代市内を震源域にマグニチュード5.5、震度5強を観測している。その後も頻繁に余震が続いている。八代市から川内原発まで約80キロメートル。震源域がさらに近づけば危険性が増してくる。

――原子力規制委員会によれば、最初の地震で観測された川内原発での地震加速度の最大値は8.6ガル。これは原子炉自動停止の設定値である水平加速度160ガル、鉛直加速度80ガルをともに大幅に下回っているとのことです。こうしたことから規制委の田中俊一委員長は「安全上の問題はない」としています。

大規模な地震が相次いでいることから、現在は赤信号が点滅している状態だ。火山の噴火が差し迫っていることが察知できた場合にはいち早く原子炉を止め、使用済み燃料をプールから取り出して安全な場所に移送する手はずになっている。それができるとは思えないが、似た状況が地震によって起きる可能性があるのだから、あえて止めない判断をする理由はない。

今回、気象庁は最初の地震をいったん本震とみなしたものの、後にさらに大きな地震が発生したことからもわかるように、想定外はいつでも起こりうる。ステレオタイプな発想をしていると、想定外の事象に巻き込まれてしまう危険性がある。シナリオが外れた場合のリスクを考えたうえであらかじめ危険を取り除くべきだ。

――東日本大震災が2011年3月に起き、2011年5月に中部電力は当時の菅直人首相の要請を受け入れる形で浜岡原発の稼働を停止しました。その際、住民や株主などさまざまなステークホルダーの利益に配慮したうえで判断したといいます。

今回、株主の利益に照らすと二つの考え方があるだろう。一つは事故が起きた時の影響の大きさを考えて止めるという考え方だ。東京電力・福島第一原発事故をきっかけに東電が事実上経営破綻して国有化されたように、原発事故による被害は計り知れない。

もう一つは運転を一時的に停止した場合にどれだけの損失を被るかということだ。期間にもよるが、許容範囲ではないか。少なくとも電力不足に陥ることはないだろう。万一を考えて止めておくという判断は九電の社会的評価の向上にもつながると思う。

■避難シミュレーションは机上の空論

――広瀬さんが代表取締役を務める「安全・安心研究センター」は、川内原発の再稼働を前にした2014年11月21日から12月14日に、原発が立地する薩摩川内市およびいちき串木野市など原発から30キロ圏内の5市町村で暮らす360人を対象にアンケート調査を実施しました(アンケート調査結果は岩波書店『科学15年3月号』に掲載)。それによれば、「おそらく安全に避難できない」と「安全に避難できない」を合わせた住民が、薩摩川内市で69.5%、それ以外の30キロ圏で61.7%にのぼっています。「安全に避難できる」と「おそらく安全に避難できる」の合計はそれぞれ30.0%、38.4%にとどまりました。

逃げられないと思っている人が実際に多いことがわかった。鹿児島県は川内原発で重大事故が発生した際の避難計画を策定しているが、そのシミュレーション結果には現実味がない。

重大事故が起きた場合に避難指示が出されてまず5キロ圏内の住民が避難を開始し、その9割が30キロメートル圏外に避難できたことを確認してから、5~30キロ圏の住民が避難し始めるという「2段階避難」をシミュレーションの前提としている。

30キロ圏内の住民のうち9割が避難を終えるまでに「国道270号線が通行できない場合」で22時間30分、「南九州西回り自動車道が通行できない場合」で28時間45分と試算されているが、20万人近い住民の避難がこの程度の時間で済むはずがない。

まず第一に、2段階避難という想定が非現実的だ。多くの人は避難指示が出ていなくても、原子力災害対策特別措置法に基づく通報などで原発に異常事態が起きていると認識すれば、われ先にと避難を始めるだろう。そうすると渋滞が起こり、避難に必要な時間はさらに長くなる可能性がある。

また、鹿児島県のシミュレーションでは、南九州自動車道が通行止めになった場合でも、代替避難経路としての国道3号線や270号線、県道42号線などにより避難できると想定されている。しかしそれらの道路が通行可能である保証はない。その意味でも「最悪シナリオ」は想定されていない。

■伊方原発の事故でも避難困難

――緊急時には自動車での避難が前提とされています。支援が必要な高齢者や障害者については、バスによる避難が計画されています。

バスによる避難が現実的に機能するのか疑問がある。高齢者はバスが来る場所までたどり着かなければならない。崖崩れで道が通れなかったり、放射線量が上昇しているときに被ばく覚悟でバスを運行できるのか。自然災害が原発事故と連動すると、避難もできずに孤立無援状態に陥る。

前出の私どものアンケート結果を見ても、住民がそう認識していることがわかる。避難計画を作っても、いざというときには機能しないのが原発災害を伴う複合災害だ。

――四国電力の伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)はどうでしょうか。伊方原発は佐田岬半島の付け根にあります。原発から西側は「予防避難エリア」とされ、そこに住む約4900人の住民は海路による避難が想定されています。

私も佐田岬半島の先端部にある三崎港から対岸の大分県にフェリーで渡ったことがあるが、九州と四国を結ぶ豊予海峡は流れが速い。津波警報が出ていると避難自体が無理だ。港にたどり着くのも容易ではない。伊方町役場は原発から非常に近い距離にあるため、住民の避難誘導は困難だ。

――要するに、原発事故は起きてしまうと対応不能になるということですね。

その通りだ。だからこそ赤信号が点滅している状態では、電力会社は想定外の事象を防ぐためにいったん立ち止まるべきだ。それが原発の一時稼働停止だ。もう一度重大事故が起きたら日本の原子力発電はおしまいになる。目先の利益にとらわれずに判断すべきだ。

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川内原発抗告審 福島の教えはどこへ

【川内原発抗告審 福島の教えはどこへ】
中日新聞 2016年4月7日

司法がまた揺れている。福岡高裁は、巨大噴火のリスク評価や事故時の避難計画に問題があったとしても、九州電力川内原発の稼働には合理性があるという。3・11の教訓無視だ。納得できようか。

争点は大きく三つ。

基準地震動(最大の揺れ)の想定が妥当かどうか。火山による危険性はあるか。そして、事故に備えた避難計画は有効か。

福岡高裁宮崎支部は、これらを踏まえた原子力規制委の審査について「極めて高度の合理性を有する」「九電は説明を尽くした」として、川内原発の停止を求める住民側の訴えを退けた。

新基準に疑問を投げかけ、高浜原発の停止を認めた先月の大津地裁などとは正反対の判断だ。

原審同様、九電側の主張をほぼ受け入れたとも言えるだろう。

川内原発は、桜島周辺の姶良(あいら)カルデラ(陥没)などに囲まれた、巨大噴火のなごりをとどめる“火山銀座”の内側にある。

火山の影響について裁判長は、巨大噴火の予測を前提とする規制委のリスク評価を「不合理」と指摘した。

ところが、原発の運転期間中に破局的噴火が起きる根拠がないとして、川内原発の立地が客観的に見て不合理だとも言えない、と断じている。巨大火山と共生する住民の不安には、まったくこたえていないと言っていい。

専門家から「机上の空論」との批判が強い避難計画についても「問題点を指摘できるとしても、人格権を違法に侵害する恐れがあるとは言えない」という結論だ。

不合理な火山の評価、問題があるやも知れぬ避難計画、住民の安全安心に照らして見れば、どこに、どのような「合理性」が存在すると言うのだろうか。

福島の被災者は、どのように受け止めているのだろう。
想定外のことは起きる。核の制御は本当にできるのか-。


3・11がのこした大きな教訓だ。その教訓の上に立ち、司法の中にもようやく「原発の安全性については、原則、専門家の指針に基づく行政の判断に委ねる」(一九九二年、伊方原発訴訟)という古い最高裁判断よりも、住民の生命と安全を守るという視点から、自らの判断を明らかにするようになったはずではなかったか。

このような安全軽視の「不合理」は、規制委や規制基準への信用を、なおさらおとしめるだけではないのだろうか。

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