原発のない社会をめざして 安倍政権の原発輸出 原子力外交で復活するムラ

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安倍政権の原発輸出 原子力外交で復活するムラ

DIAMOND ONLINEに、元朝日新聞編集委員でジャーナリストの山田厚史氏が、とても素晴らしい意見を寄せておられました。少し長い記事ですが以下は転載です。
 







【安倍政権の原発輸出 原子力外交で復活するムラ】
DIAMOND ONLINE 2013年5月9日

安倍首相はアラブ首長国連邦(UAE)、トルコを訪れ原子力協定を結び、原発輸出を約束した。フクシマの惨事は原因さえ究明されていないのに。放射能汚染水は大量に漏れ収束とほど遠い。安全神話が招いた未曽有の事故はなにひとつ責任が問われないまま、原発推進体制は海外から復活する。

■「パッケージ型輸出」に原発を組み込む

「原発輸出」は6月の成長戦略に盛り込まれる。原発を前面に押し出すかどうかは未定だが、「パッケージ型輸出」という表現になるという。原発の設計・建設から運転・メンテナンスまで一括して受注する。場合によっては原発で起こした電気を使って鉄道を走らせたり、都市開発をパッケージにして途上国に売り込もうという算段だ。

鉄道や道路など海外のインフラ建設は、それが日本が供与する円借款つきでも中国や韓国にさらわれるようになった。困難になった受注を回復すべく、街作りや事業運営など付加価値をつけ、構想段階から日本が関与する「パッケージ型」に活路を求め、そこに原発を組み込もうというのである。

フクシマ第一原発の事故が起こる前、民主党鳩山政権でも原発推進は表舞台に上がっていた。地球温暖化対策としてCO2を大量に発生させる石油火力に代わり、2030年にはエネルギー構成の50%を原発で賄う、という方針が決まった。併せて原子力技術を日本の得意分野に育て、技術を海外に売り込む戦略が練られた。

当時、仙谷由人官房長官を中心に官民一体の輸出体制が組まれた。キーマンが二人いた。一人は経産省事務次官から内閣官房参与になった望月晴文氏、もう一人が仙谷氏が知恵袋として重用した国際協力銀行(JBIC)の執行役員・前田匡史氏だ。望月氏は資源エネルギー庁長官を経て事務次官を3年務めた原発政策の実力者、前田氏は資源外交のプロで、海外に独自のネットワークを持っている。エネルギー政策の門外漢だった仙谷氏はこの二人を頼り、言われるがままに原発大国化へと踏み出した。

3・11が事態を振り出しに戻す。首相の菅直人は原発輸出をご破算にした。一歩間違えば首都圏壊滅という事態に肝を冷やした民主党政権は、もはや他国に原発を売り込むなどという選択の余地はなかった。自民党政権が復活し、喉元過ぎれば熱さは忘れる、ということか。安全は脇に置き、途上国に原発を売って日本は成長を目指すというのである。

フクシマでは16万人が自宅に戻れない。メルトダウンした核物質はどこにあるのか分からない。地下水や海に放射能が今日も流れ出ている。爆発で屋根が飛んだ4号機の3階に、1533本の核燃料棒がプールに沈んでいる。取り出すことも、十分な補強工事も出来ないまま放置され、燃料棒が崩れ落ちれば東京は首都機能を失う恐れさえある。

■原発を巡る日米連合

危機は隣り合わせにあるのに、何ごとも無かったかのように輸出が再開される。推進役は「原子力複合体」である。電力会社・原発メーカーなどに政治や行政が絡み合った利権システムである。

原発メーカーといえば、米国のゼネラルエレクトロニクス(GE)とウエスティングハウス(WH)が世界の2大勢力だった。GEは沸騰水型、WHは加圧水型の原発を開発し技術で世界をリードしていた。だが米国で製造業が衰退する中で、WHは06年に東芝に買収され、GEは日立、三菱重工と技術提携して日米連合が形成された。

ライバルはフランスのアレバ、ロシアはアトムエネルゴブロム、韓国には斗山重工がある。どこも国営で一国一社。日本は東芝・日立・三菱の三社が米国と緊密な連携で途上国市場をうかがう、という構図だ。限られたメーカーが世界市場を目指す中で、日本は原発の立地拡大、輸出ドライブという政策を打ち出した。

半導体、コンピュータ、家電などで後退が目立つ日本の電機メーカーは重電で生き残りをかけ、米国の肩代わりともいえる原子力分野が期待を持てる、と経産省は考えた。米国との連携で貿易摩擦の心配はなく、むしろ後押しが期待できると見たからだ。

■巨大企業と政府を結ぶ「官民一体体制」

米国副大統領だったゴアが旗を振る「温暖化対策」は、日本政府が原発推進に舵を切る絶好の口実になった。こうした流れは経産省内部の勢力関係を変えた。電力自由化を主張するグループが排除され、電力独占体制護持・原発推進のグループが力をつけ巨額の予算がかかる六ヶ所村の原子力燃料サイクルが強行された。

地域独占で資金と政治力を持つ電力会社、業界の後押しで自民党内で政策を仕切る族議員、電力会社や原子炉メーカーに天下る官僚機構、そして周辺の御用学者、といった強固な権力構造が原発推進へと動き出したのが2000年代である。

朝日新聞に連載中の「プロメテウスの罠」によると2011年2月、原発関連企業や電力会社のトップによる「原子力ルネッサンス懇談会」が発足した。会長は元東大総長で原子核物理学者の有馬朗人氏、座長が日本原子力産業会長で新日鉄社長や経団連会長を務めた今井敬氏。そして座長代理が経産次官を前年に退いた望月氏だった。原子力に群がる巨大企業と政府を結ぶ「官民一体体制」である。

電力会社など原発業界が頼りにしてきた政治家は甘利明氏である。自民党商工族の重鎮で原子力行政に深く関与してきた。2006年第一次安倍内閣で経産相に就任、エネ庁長官だった望月氏を次官に引き上げたのは甘利氏である。甘利大臣・望月次官の時に新潟県中越沖地震が発生、柏崎刈羽原発で火災が起きた。東京電力は適切な情報開示をしなかったが、経産省は東電の勝俣社長に引責辞任を求めなかった。甘利・望月体制による甘い措置がフクシマへの導火線となったともいわれる。

政官財一体となった原発体制は民主党政権にも引き継がれ、福島第一原発の事故で幕間に隠れたが、自民党の政権復帰で再び舞台に上がった。甘利氏は経済政策全般をまとめる経済再生担当相になり、望月氏は日立製作所の社外取締役に収まっている。

■米主導の核管理体制の中でビジネス

ゴールデンウイークに大勢の財界人を引き連れて海外歴訪した安倍首相は、トルコでは原発2基を受注、UAEでも受注への下工作を行った。日本は既にヨルダンとも原子力技術協定を結んでいる。この地域は核開発疑惑が問題になっているイランの周辺国だ。原発建設は表向きは平和利用だが、核開発への転用が可能であることから深謀遠慮が渦巻いている。

日本が原発に力を注ぐのは、いつでも核兵器を製造できる核燃料プルトニウムと原子力技術を持つ「潜在的核保有国」であることに狙いがある、ともいわれている。かつてシリアが建設中の原発をイスラエルが空爆して破壊したのも、原発技術が核に転用されることを怖れたからだ。緊張が増す中東でUAE、ヨルダン、トルコまでも原発に頼るのは「潜在的核保有」と無縁ではない。

イスラム国家に核技術が流れることを米国は警戒している。放置すればロシアや中国が核技術を提供しかねない。そこで日本に出番が回ってきた。日立・東芝・三菱はGEやWHの現場監督のような役回りである。日本勢は米主導の核管理体制の中でビジネスをしているのが現状だ。

核技術や核物質の監督はIAEA(国際原子力機関)の仕事だが、国家が意図的に隠そうとすれば完璧な調査はままならない。日本勢が建設から運転までを担えば情報管理はやりやすい。日本が成長戦略として原発輸出に励む背後には、米国が望む核不拡散=世界核支配体制の堅持という大きな絵があるということだ。

■あっけらかんとしたセールスマンぶり

田畑も山も川も海も汚され、作物は売れず、健康まで脅かされ、暮らしは破壊された。原発はもうこりごりと思う人は少なくないが、首相は「日本の原発は世界で一番安全」と売り歩いている。「原発被害なんて早く忘れて」といわんばかりのあっけらかんとしたセールスマンぶりだ。

「原発の電気が一番安い」という幻想が崩れ、「原発を止めると電気が足らなくなる」というプロパガンダも、人々は信じなくなった。今度はアベノミクスの成長戦略にのせて「景気をよくする原発輸出」という宣伝だ。脱原発への流れを押しとどめようと、まず海外から外堀を埋める。よその国がこんなに頼りにする原発を、なぜ日本の皆さんはダメだというのですか、というキャンペーンである。

原発を早く再稼働したい電力会社。投資を回収するため原発を作り続けたいメーカー、資材や部品を供給する関連企業群、原発事業を職場とする労働組合、原発産業に寄生する政治家や政党、原発を推進し天下り先を頼ってきた官僚組織、核戦略に日本の政府とメーカーを組み込んだ米国……。どれも半端ではない力を持った勢力が、フクシマを忘却の彼方に押しやろうとしている。

首相は好調な支持率に乗って、ここぞとばかり時計の針を戻そうとしている。参議院選挙までは慎重に、当分は景気回復に邁進、と自らに言い聞かせているらしいが、予想外に好調な滑り出しで、憲法改正ばかりか原発復活まで持ち出してきた。

猪瀬都知事はたったひと言で五輪誘致を失速させた。史上最高得票が自信を与え、慢心を生んだ。434万票をとった人とは思えない浅はかな言葉が、知事の馬脚を露わしてしまった。

政治家・安倍晋三は、フクシマをどう考えているのだろう。忙しい首相の日々で、深く考えるゆとりもないのかもしれない。原子力事故は人類の教訓でもある。復活を急ぐ周囲の振り付けに乗って、無邪気に先を急ぐ政策は被災者の心を逆なでる恐れさえある。油がのっている時こそ滑り易いのが政治家である。

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