原発のない社会をめざして 戦時法制に逆戻り、危うい特定秘密保護法 狙いは日米安全保障の実態報道の制限

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戦時法制に逆戻り、危うい特定秘密保護法 狙いは日米安全保障の実態報道の制限

少し古くなってしまいましたが、特定秘密保護法について週刊東洋経済に良い記事がありました。以下は転載です。








【戦時法制に逆戻り、危うい特定秘密保護法 狙いは日米安全保障の実態報道の制限】
週刊東洋経済2013年12月2日号

「西山事件の判例に匹敵するような行為は、たとえ取材活動であっても処罰の対象になる」──特定秘密保護法案の審議を担当する森雅子国務大臣が10月22日の記者会見で示した見解だ。

西山事件とは、沖縄返還交渉の過程で、公式発表によれば米国が沖縄の地権者に対して支払うはずの土地の原状回復費400万ドルを、日本政府が裏で肩代わりするという、日米政府間の密約をスクープした西山太吉・毎日新聞政治部記者(当時)が逮捕された事件である。新憲法下においても、国家権力は国民の知る権利を躊躇なく押し潰すことを実証した点で、戦後史に残る事件となった。先の森大臣の見解は、特定秘密保護法案の本質を象徴的に示している。

特定秘密保護法は、政府が保有する広範な秘密情報のうち、(1)防衛、(2)外交、(3)外国の利益を図る目的で行われる活動の防止、(4)テロ活動の防止の四つの分野に関し、政府が「特定秘密」として指定した情報の漏洩、取得(未遂も含む)、取得するための共謀、教唆、扇動の行為を最高懲役10年という重い刑で罰しようという法律だ。すでに11月26日夜、衆院本会議に緊急上程され、自由民主党、公明党、みんなの党の賛成多数で可決、参院での審議に入った。

安倍晋三首相は2度目の政権を樹立すると、新憲法に規定された戦後日本の基本的な立ち位置の変更を企図した政策を着々と打ち出してきた。

従来の自民党政権の中でも際立っている憲法改正への意欲、改憲へのハードルを下げるための憲法96条先行改正論のプロパガンダ、そして先行改正論に対し国民の警戒心が高まった後は、ダイレクトな改憲論をいったんは取り下げて、軸足を集団的自衛権行使を可能にする憲法の解釈変更へ移す──いずれも、日本を“第2次世界大戦の敗戦国”から“戦争もできる普通の国”にしたいという安倍首相の志向性と執念を明確に示すものだ。

森大臣の前述の発言が極めて重大なのは、政府が「特定秘密」として指定した情報の中に、政府の施策の違憲性、違法性、国民に対するうそなどを立証する情報が含まれている場合であっても、取材行為それ自体が処罰されることもありうると法案の担当閣僚が明言した点にある。

西山事件では、記者が取材過程で、情報入手ルートだった女性外務事務官との男女関係を利用した点が国家公務員法第111条違反(秘密漏洩のそそのかし)に当たるとされた。

このスクープは、沖縄返還交渉で米国に対してあまりに従属的だった実態を隠したい佐藤栄作政権(当時)が国民にうそをついていたことを明らかにしたものであり、その後、米国での公文書公開や、交渉当時、外務省アメリカ局長だった吉野文六氏の証言によって、密約の存在は明白になった。だが、日本政府はいまだに公式には密約の存在を認めていない。

これらの事実が示しているのは、日米密約の存在を認めることが、日米の安全保障にとってすでに何ら害を及ぼすものではないにもかかわらず、認めたくない事実はあくまで隠蔽しようとする国家権力というものの本質である。今回の特定秘密保護法は、まさにこうした文脈の中に存在する。

「文脈」とは、第一に、日本政府が、特定秘密保護法によって隠したい情報の最たるものが日米安全保障条約の運用実態であり、隠したい主要な相手が、ほかならぬ日本国民であること、第二に、財政的な苦境から日本が駐留費用を負担することを必要としている米軍と、領土や資源開発をめぐる周辺国との軋轢の高まりから日米同盟の強化を望む日本政府の利害が、足元で一致しているということである。集団的自衛権問題も、まさに同じ文脈の中で浮上している。

特定秘密保護法に対する批判は多い。その中心は、同法が国民の知る権利を侵すという点だが、実は、主に日米同盟による安全保障について報道を萎縮させ、知る権利を制限することこそ真の目的であるといえる。

■情報公開は欠点だらけ

日本という国はそもそも、国民の知る権利という観点から見ると、先進国の中では非常に遅れている。たとえばわが国の情報公開法には、次のような大きな欠点がある。

第一に、開示情報の範囲が狭い。その結果、開示された公文書のコピーは黒塗りだらけとなる。
第二に、開示手数料が高い。その経済的負担が開示請求への抑止力となっている。
第三に、開示決定までの期間が長い。
第四に、不開示決定の場合、その理由が開示されない。


日本では公的な記録を保管官庁が裁量で破棄したり、隠したりするケースがかなりある。西山事件の極秘電文も現在、不存在ということになっているが、破棄されてしまった可能性が高い。

重要な会議でも、議事録を取らないケースが存在する。東日本大震災の原発事故への対応を決めるいくつかの重要会議で議事録が取られていなかったことは問題となった。

古い話では、1945年8月、日本がポツダム宣言の受け入れを決めた直後、後世に残したくない、あるいは連合国に見られたくない大量の公文書が軍によって焼却されてしまったことが有名だ。知られると困る事実を闇に葬るのも“国家権力の常”なのである。

特定秘密保護法は、秘密の指定が政府の裁量でいくらでもできる点、秘密にする期間もいつまでも延長できる点、特定秘密の指定、解除、廃棄などの詳しい仕組み自体が秘密である点など、ほとんど戦時法制に逆戻りするような、成立させてはならない極めて危険な法律である。

現在、日本に必要なのは、時の政府の都合による公文書の破棄や滅失を禁止し、しっかりした保存を義務づける公文書管理法の改正と、情報公開を実質的なものにする情報公開法の改正なのだ。

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