原発のない社会をめざして 賠償利権に群がるブローカー 滋賀の放射能汚染木くず不法投棄事件

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賠償利権に群がるブローカー 滋賀の放射能汚染木くず不法投棄事件

【賠償利権に群がるブローカー 滋賀の放射能汚染木くず不法投棄事件】
東京新聞 2014年4月4日

福島原発事故で放射性セシウムに汚染された木くずの一部が、不正なルートで全国にばらまかれていた。滋賀県の琵琶湖畔に汚染木くずを不法投棄したとして、滋賀県警は3月上旬、廃棄物処理法違反などの疑いで、東京都内の会社代表らの関係先を強制捜査した。この代表には、東京電力から処理費用名目で約4億円が支払われた可能性がある。事故の賠償利権に群がるブローカーまがいの人たち、それを見逃す東電のずさんなチェック体制が浮かび上がる。

◆不法投棄された木くずと東電からの金の流れ

滋賀県警の強制捜査を受けたのは、東京都千代田区のコンサルティング会社代表の男性A氏と、滋賀県近江八幡市の土木業者、A氏と土木業者を仲介した横浜市の団体役員の男性B氏の計3人の関係先などだ。

県警が受理した滋賀県の告発状などによると、3人は昨年3月15日から4月30日ごろ、福島県本宮市の製材業者から排出された産業廃棄物の木くず310立方メートルを適正に処理しないまま、滋賀県高島市の琵琶湖近くに不法投棄した疑いがもたれている。

県の測定では、木くずから1キロ当たり最大3900ベクレルの放射性セシウムが検出された。木くずは、第三者が2月末までに自主撤去した。県が撤去後の土壌のセシウム濃度を調べたところ、原子炉等規制法で放射性物質として扱う基準値100ベクレルを下回ったものの、県の対応の遅れなどが周辺住民の不興を買った。

県の告発状では、問題の木くずは滋賀県以外でも鹿児島市、山梨県富士河口湖町、千葉県内などに運び込まれていた。

福島県内の製材業者は事故以降、製材の過程で排出される樹皮などの木くずの処理に苦慮している。放射能汚染への懸念で引き取り手が激減したためだ。

2月末現在、約6万2000トンが製材会社敷地内で滞留していると推計され、今も月6000トンのペースで排出。滞留すると保管場所の確保が難しくなるほか、長期間の保管で発酵し、自然発火する危険もつきまとう。

福島県木材協同組合連合会(福島市)の測定によると、事故当初、木くずは放射性セシウムの濃度が1キロ当たり4000ベクレル程度あったが、昨年には1キロ当たり500ベクレル前後まで低下した。破砕した後、汚染されていない木くずを混ぜるなどの処理を施せば、セメントや堆肥として使えるレベルだ。

事故後の木くずの処理は、製材業者が処分業者に費用を払った後、東電に賠償請求する仕組みだ。だが、東電からの入金は時間がかかる上、事務手続きも負担だ。そもそも引き取り手を見つけるのが一苦労である。

こうした福島の業者の窮状に付け込んだのがA氏らだった。2012年12月、本宮市の製材業者に無償の処理話を持ち掛け、事務を代行する契約を結んだ。滋賀県警の調べなどでは、A氏は、5000トンを処理する費用として、東電に4億円を請求して受け取ったとされる。木くず1トン当たり7万円超で処分を請け負った形だ。通常の処分費用の相場は、高くても1トン当たり5万円だから、かなり割高だ。東電はA氏の取り分を上乗せし、賠償を支払ったようにも見える。

事件の関係者を直撃した。A氏と土木業者をつないだB氏は「A氏から、利益の分け前をもらおうと思っていたが、違法性の認識はなかった。A氏は『東電に知人がいて、放射能汚染された産廃の処理の仕事があるから、手伝ってもらいたい』と言っていた」と釈明した。

一方、A氏は「B氏が、仕事を横取りしようとしたから、こうなった。はめられた。やられっぱなしだ」と訴えた。4億円の支払いについては取材に応じなかった。

本宮市の製材会社会長は「すべてをA氏に任せていた。A氏は『東電とも関係がある。福島のために力を貸したい』と言ってくれた」と説明した。東電の広報担当者は「(A氏らと)社員が関わっていた事実は、確認していない」とコメントした。

A氏が東電に示した計画では、木くずを東京都葛飾区などの処理業者に運び込んで適正に処理し、A氏の父親が代表の庭園会社(東京都中野区)が最終処分することになっていた。ところが、滋賀県によると、処理施設は長年稼動していなかったとみられる。

庭園会社の本店は、A氏の自宅と同じ住所にあった。会社の看板はなく、たたずまいは民家だ。父親の名前の表札だけが出ていた。

福島県木材協同組合連合会の宗形芳明専務理事(69)は「A氏はほかにも、3社を勧誘していた。処理施設を持っていないのに、処分を引き受けるというブローカーは少なくない。ブローカーがもうかる仕組みで、東電が唯々諾々と賠償を支払うのは違和感がある」と強調する。

福島市の製材工場の幹部(54)も、A氏から話を持ち掛けられた一人だ。「無償で処分してくれるなら、すがりたくなる。今回の事件で、福島はまだ汚染物を出しているのかと思われ、イメージダウンだ。まじめに処分している人がバカをみる」とため息をつく。

宗形氏は「現在引き受けてくれている処分業者に契約を解除されると、また滞留が増えることになる。国、福島県、東電の責任で、安定的な処分方法を考えてほしい」と切望する。

原発事故前、樹皮などの木くずは、バイオマス発電用の燃料の原料としても販売されていたが、福島県内の2カ所で稼働する発電所は今も、樹皮を受け入れていないという。その焼却灰は濃縮されてセシウムの濃度が高くなるからだ。

福島県塙町で計画したバイオマス発電所の建設も住民が反対し、2月に正式に中止が決まった。他にも県内6カ所で発電所が検討されているが、採算性の問題などでメドは立たない。

東電の賠償問題に詳しい保田行雄弁護士は「東電は、人が自殺しても損害賠償を抑えようとする。全体的に賠償を絞っている状況なのに、特定の人に、賠償を緩めているとすれば、許されないことだ」と憤る。

明治学院大の熊本一規教授(環境政策)は「東電が、処分費用の負担をしているということは、不法投棄の排出元とみてもよい。排出元は、適正に処理されているか、チェックする道義的な責任がある。今後も同様の事件が頻発する可能性もあり、東電はきちんと責任を取るべきだ」と指摘した。

<デスクメモ>

原子力ムラの住人たちは福島原発事故の責任を取らないばかりか、ゼネコンと原発関連業者が後始末でもうける仕組みをつくった。例えば除染であり、震災がれきの広域処理である。魑魅魍魎(ちみもうりょう)のような人たちには、何でも利権に見えるらしい。滋賀の不法投棄事件も氷山の一角にすぎない。(圭)

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