原発のない社会をめざして 鳥越俊太郎×長谷川幸洋 「世論調査は世論操作である」

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鳥越俊太郎×長谷川幸洋 「世論調査は世論操作である」

少し古いですが…週刊ポストの誌上で、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏と長谷川幸洋氏が、マスコミの世論操作の現状について対談していました。長いので途中の小沢一郎問題の部分は略しますが、前半と後半部分を転載させていただきます。







【鳥越俊太郎×長谷川幸洋 「世論調査は世論操作である」】
週刊ポスト 2012年8月3日号

「小沢新党、期待せず79%」「消費増税法案可決を評価する45%」と大々的に報じられる世論調査の結果に違和感を覚える人が多い。周りの人々と話しても、とてもそんな結果になるとは思えない。世論調査の数字は、本当に”民意”といえるのだろうか。ともにメディアに籍を置き、表も裏も知り尽くす鳥越俊太郎氏と長谷川幸洋氏は「世論調査ジャーナリズム」に正面から疑義を呈した。

■鳥越氏が見た「数字調査の現場」

鳥越:昔、世論調査は選挙の時ぐらいしかやらなかった。でも今は政局が動くたびにやっていて、明らかに過剰な数です。今回、『週刊ポスト』が調べたところ、この半年間で読売が12回、次いで朝日が11回。これに産経、毎日、日経も7回程度やっていて、大手紙だけに限っても実に4日に1度、どこかが調査を行っている計算になる。しかも、新聞の一面トップを飾ることが多くなった。

長谷川:世論調査が増えたという印象は私も同じです。10年以上前は調査員が戸別訪問して行う「面接調査」が中心でした。今はコンピューターがランダムに選んだ電話番号をもとにオペレーターが電話をかけて調査する「RDD](Random Digit Dialing)という方式が主流です。この方式だと、調査が簡単に素早くできるようになった反面、調査結果が歪んでしまう可能性があるんです。

鳥越:固定電話の番号だから、あまり家にいないサラリーマンや若年層は有効回答から除外されやすいよね。

長谷川:そもそも、ひとり暮らしの若年層は固定電話自体を持っていませんよ。他にもさまざまな問題がある。電話口で読み上げるので回答の選択肢の前の方にあるものが選ばれやすい、態度がはっきりしない回答者に「あえていえば」などと重ね聞きするかしないかで結果の数字が大きく変わってくる、といったことです。

鳥越:毎日新聞の記者時代の経験ですが、例えば、選挙に関する世論調査の結果を発表する前に選挙の担当者が数字を”調整”するのをしばしば見てきた。担当者が取材で掴んだ選挙区情勢と違うという理由です。そういった裏事情を知っているので、私自身は世論調査の数字を疑っています。

(中略)


長谷川:新聞・テレビの調査結果とネットのそれでも大きく異なることが多い。特に小沢氏に対する支持率がそうで、ネットでは非常に高い。「Yahoo!みんなの政治」などの方が、調査主体に変な色がついていないだけに、世論の実態を反映しているのかもしれない。ただし、ネットも完全には信用できない。ネット番組でTPPについて賛否を投票してもらうと8割ぐらいが反対でした。外資やグローバリズムを嫌う層が多いんだと思います。

鳥越:今は、中立、公正、客観的に民意を映し出す世論調査の仕組みがなくなっている。

長谷川:まずはメディアがしっかりすべきだと思いますが、まだ十分ではない。他に内閣府も世論調査を行っていますが、国会の原発事故調委員長の黒川清氏の言葉を借りれば、政府に対する信頼度がメルトダウンしているから、国民から信用されない。そこで今、国会事故調の厳正さを見ると、私が期待しているのは国会です。衆議院や参議院の調査局が世論調査を行ってもいい。

鳥越:それでも最後はメディアに期待したいですね。

■現代版「ええじゃないか」

長谷川:政治はもちろん、メディアに対しても国民の不信感は高まり、世論調査を筆頭に、僕も自分の気持ちを代弁してくれないという思いが強い。「腑に落ちない」感覚が日に日に溜まり、それをどこかで晴らしたい。実は今、首相官邸前で「原発再稼働反対!」と叫ぶことが、その鬱憤晴らしになっていると思うんです。あれは現代版「ええじゃないか」なんですよ。

鳥越:私は60年安保世代なので、若い頃、街頭に出て政府に抗議するのは当たり前のことで、学生の頃は毎日のようにデモに行っていました。その一方、世の中が豊になり、しだいに鬱憤を晴らす必要もなくなっていった。そのため、選挙は別として、国民が自発的に政治的な意思を示すことがなくなったんです。ところが今、数十年ぶりにそれが蘇っている。新聞、テレビはあまり大きく伝えてはいませんけれどね。

長谷川:私は今回の現代版「ええじゃないか」の現場を見て思うのは、あれはデモでもなければ集会でもない、ということです。強力な主催者やリーダーがいるわけでもなく、デモや集会の許可申請をしているわけでもない。ツイッターやフェイスブックを通じて、組織に属さないただの個人が勝手に集まって自然に群衆となり、それぞれ勝手に「原発再稼働反対」と叫び、それぞれ勝手に帰っていく。かつての反体制運動には反体制組織への忠誠があったのに、そういうものがほとんど見えません。そこが新しいところであり、凄いところなんです。

鳥越:民主主義社会にとって、ひとつの論に集約されることは非常に不健康なことで、常に異論が存在し、それを許容する余裕があるというのが健康な状態です。反小沢にせよ、消費増税賛成にせよ、世論調査を使ってひとつの意見に染め上げられようとしているのは、好ましい状態ではない。

秩序や組織性からはみだしている「反原発の群衆」はまさに現代社会の異論です。そういうものを政治もメディアも大嫌いだから取り上げたがらない。彼らが作り上げてきた原発という豊かさの象徴が否定されているのだから尚更です。

長谷川:私はあそこにこそ、世論調査によって示される「民意」なるものとは違う、本当の民意があるような気がしています。

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